株式会社 理論社

くうきラボ 第1回 お菓子の包み紙事件

中学生
しつもん
学校内のゴミ箱からお菓子の包み紙が見つかって、全校集会で「誰が食べたのか」厳しく問いただされました。
確かに「お菓子は持ち込み禁止」が決まりですが、そんなに大騒ぎすることでしょうか。
長時間の集会を我慢しながら、だんだんバカバカしくなってきました。(中学3年)

くうき
くうき

あら、長時間の集会なんて大変ね。そんなにダメかしらお菓子って。

プロフェッサー・ケンタ
プロフェッサー・ケンタ

多くの学校では、お菓子の持ち込みは禁止されているようです。
似たような事例として、小学校の学童保育で前日にもらったお菓子がポケットに入っていたのを下校中に食べたということが伝わって、先生に怒られたという話も聞いたことがあります。

くうき

同じ学校周辺のことでも学童保育の枠内ならお菓子を食べてよくて、下校中はダメ。
なんだか細かくて、決まりを守る方も守らせる方も大変よね。
プロフェッサー・ケンタ
日本では、「お菓子はダメなもの」ということがルールで決まっていることが多いのが現実です。
でも野球やサッカーの選手は試合中、緊張をほぐしたり集中力を高めるために、ガムを噛んだりヒマワリの種を食べたりしています。
映画などで海外の学校の様子を見ると、休憩時間に皆で楽しそうにお菓子を食べることは、むしろ普通の光景であるといえます。

くうき

ヨーロッパの小学校では、先生が玄関で下校の見送りをしながら一人一人にチョコを配ったりするのよ。
みんな大喜びで……。なんで日本の学校は、何でも禁止にするのかしら?
プロフェッサー・ケンタ
日本では確かに昔から、学校は「躾(しつけ)」を教える場所という考え方が強く、先生の話は行儀良く、きちんと真っ直ぐ目を見て黙って聞く、といった授業中の態度を守ることが大切だとされます。
教育の場に必要ないものは一切持ち込ませない、という考え方も強いです。
ついこないだまでは、授業中に水分を補給することも、多くの学校では禁止されていました。
水を飲めるようになったのは、まだ最近の話です。

くうき

水が禁止だったなんて熱中症対策が当たり前の今から考えたらビックリよね。
今は逆に水筒持ってくって決まりがあったりして、決まりの振れ幅大きすぎ。元の「水分補給禁止」の決まりに根拠がなかったってことよね。
プロフェッサー・ケンタ
また、休み時間などにお菓子を食べることはだらしないとか、甘いものを摂りすぎて体に良くないとか、あるいは生徒の間で持ってこられる人とこられない人の貧富の差がはっきりして教育上好ましくない、などを理由として、一律で禁止にしている例が多いようです。
お菓子を許すと、そこから綻び(ほころび)が出て、学校全体の規律が緩んでしまうことを恐れ、絶対許さないという強い姿勢でのぞんでいる典型例であるともいえるでしょう。
くうき
「お菓子の紙を見逃したら、他の規律も緩んじゃう」。
だから、全校集会ね。
プロフェッサー・ケンタ
もちろん、授業中にお菓子をむしゃむしゃ食べることは、授業の妨げになるので「やってはいけないこと」です。
しかしそれは校則で決めるというよりは、それ以前の礼儀として注意する問題でしょう。
一方で、昼休みや学校帰りに、デザートとして、あるいは小腹が空いた時の足しとして、持参したお菓子を食べることに、学校として目くじらを立てることが必要かは大いに疑問があります。
くうき
4時間目なんてお腹が空くでしょ、みんな育ち盛りなんだから。シーンとしてる授業中にお腹がなっちゃうんじゃないかと思うと集中できないじゃない?
勉強第一なら休み時間にちっちゃいおにぎりでも食べて集中して授業受けた方がいいと思うけど。
プロフェッサー・ケンタ
そうかもね。
でも、おにぎりはいいけどチョコはダメとか、さっきの貧富の差の問題でいったら値段が高いものはダメとか、面倒でしょ。
くうき
確かに全部禁止にしておけばいろいろ考えなくてすむから楽ね。
でもそのお陰でお菓子の包み紙が一枚でてきたら全校集会よ。
プロフェッサー・ケンタ
そう、決まりがあるから、守らせなくちゃならない。
特に、お菓子の包み紙が見つかったことで、わざわざ「誰がいつ食べたのか」を探し出すことが重要であるとは思えません。
むしろ、過剰反応による無駄な努力といってよいでしょう。もし集会をするなら、見つかったお菓子の包み紙から、栄養バランスや、使われている化学甘味料などの健康被害の話をしたりすることで、そもそもの「お菓子の選び方」を学んだ方が、とても生産的で前向きです。
くうき
それは意表をついた集会だわ〜。
集められた方もビックリだわ〜。
プロフェッサー・ケンタ
でも、その方が犯人探しよりよっぽど役に立つでしょ? 一度決めたルールを絶対視して、その理由づけがはっきりしないままで、威圧することで無理やり守らせるような校則は、立派なブラック校則です。
しかも、そんなに悪いことかはっきりしないグレーゾーンの禁止事項ほど、学校が「規則だから絶対守るべき」感を作ることに熱心で、より一層威圧的になることもしばしば、タチが悪いブラックだったりします。
よく話題になる地毛証明や下着チェックだけではなく、なんでこんなことしなくてはいけないの?と思うような、身の回りの様々な「ヘンな決まり」について、一度みんなで話し合う機会を持つことが大切です。
それは学校を<楽しい学びの場>に変えるための第1歩です。今回の質問の事例で言えば、生徒の方が「お菓子の解禁」を求めるというのではなく、「わざわざ厳しく取り締まる」ことを止めるだけで、学校の「くうき」は大きく変わることになるでしょう。
くうき
あたしも風通しの良い「くうき」になりたい!
変えてくれるといいわね。「わざわざ厳しく取り締まる」のをやめたら、長時間労働で大変な先生たちも少しは楽になるかもしれないし!
プロフェッサー・ケンタ
そしてまた、学校が一定の「自主性」を生徒に求めることで、生徒自身が「自由」の意味を学ぶ良い機会にもなるはずです。
<プチ情報>高校生自らの手で全国の高校の校則を集めた「校則データベース」もありますよ。
https://www.kousoku.org
こうした動きを伝えるもの1つとして、NHKウエブサイト「#学校教育を考える」を紹介するね。
https://www.nhk.or.jp/gendai/comment/0012/topic030.html
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